とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
アパート裏の冷たい非常階段に忍を抱いたまま降りると、しがみついている忍の背中をポンポンと叩いた。
「…着いたよ。」
その言葉にずっと目を閉じていた忍がようやく目を開けた。
「…怖かった…」
「驚かせてごめん。…さぁ部屋に入ってゆっくりしよう。」
少し声のトーンを上げた右京に忍はホッとしたように笑みを浮かべた。
怖かったけどやっぱり右京のそばが一番安心出来る。
そう思いながら彼の腕に手を絡めると右京が優しく笑った。
寒がる右京をバスルームに促す。
「一緒に入るだろ?」
当たり前の様に言う右京にちょっと呆れたが結局拒否出来なかった。
忍の長風呂にはさすがに付き合えないらしい右京は、先に上がって缶ビール片手にソファにドカッと座った。
─コツン…
テラスのある窓に何かが当たったような音が聞こえた。
テーブルに缶を置いて窓に近づいてみるとさっきの鳶がちょこんと佇んでいる。
『…バジリスク?』
窓を開けて鳶に手を伸ばすと大きな瞳を閉じてすり寄って来た。
─ウリエル様…
『どうした…人間嫌いのお前が珍しい…』
─皇帝がウリエル様の存在に気付いようです。
その言葉に右京は表情を強ばらせた。