とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
右京は膝の上に忍を乗せてポツリポツリと話し出した。
「あれはバジリスクの思念で操られた鳥だ。
彼女は人間嫌いだから人間界にはめったに降りて来ないんだけど…」
「ウリエルの従者なのに人間嫌いだなんて意外ね。」
「別に人それぞれだから人間嫌いをどーこー言う気もないし、聞く気もないから理由は知らないけどね。」
缶ビールに口を付ける右京をふーんと言いながら眺める。
「で、そのバジリスクがなんで苦手な人間界に?」
「ミカエルからの伝言を届けに来た。
気をつけろってさ…」
「何を?」
「ルシファーさ。」
サラッと言う右京に眉を寄せた忍を「心配するな」と笑った。
「ターゲットは俺だ。忍に手出しはさせない。」
「はぁ!?心配してるのは右京に決まってるじゃないの。」
「俺?まぁ何とかなるだろ。」
「その自信はいったいどこから来るのよ!」
右京の胸倉を掴んでムッとする忍に微笑む。
「怒った忍も可愛い。」
「ふ…ふざけないでよ!」
「俺の居場所は恐らくはっきりとはわかってないと思う。
まぁバレたとしても奥の手を考えてあるから大丈夫。」
その“奥の手”はかなり危険な賭けになるかもしれないが…
忍にはそれはあえて言わない事にした。