とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
叔父の家には2週間程滞在する予定だった。
「右京が休みに帰って来てくれて嬉しいわ~」
「こっちに居る間しか孝行出来ないから何でも言ってよ。」
そう言う右京に叔母は抱き付いて喜んだ。
翌日、叔父が仕事に行くと叔母は右京を買い物に連れて行った。
「右京が居てくれて助かるわ~」
「荷物持ちくらいで大袈裟だって」
叔母はいつもニコニコしていた。
「叔母さんと忍はよく似てるね。」
「そうかしら…どんなところが似てる?」
「いつもニコニコしてたり、雰囲気なんかそっくりだよ。」
そう言うと叔母は顔を近付け少し声を小さくした。
「ねぇ…右京は忍のどんなところが好きなの?」
「どんなところって…」
「知りたいわ~!」
「一言じゃ言えないけど…
そういうのって理屈じゃないと思うんだ。
全てが大事なんだ…」
「…忍は愛されてるのね~…安心したわ。」
優しい笑みを浮かべてそう言う叔母につられて微笑んだ。
ショッピングモールで日用品やら食料品を買い込み車に積み込んでいると、叔母は誰かに話し掛けられた。
『あらシズカじゃない?
若い子連れてるから誰かと思ったわ~』
『こんにちはシドニー。
うちの息子の右京よ。』
人の良さそうなその夫人は近所の人らしく、叔母は嬉しそうに右京を“息子”として紹介した。
『はじめまして。右京です。』
『まあまあ、そうだったの!
よろしく、ウキョウ。』
なんだか息子と言う単語が右京にはくすぐったかった。