とある堕天使のモノガタリⅡ ~MIDRASH~




布団に入ってからも右京はなかなか寝付けなかった。


頭の下に腕を敷いて天井を見つめたままバジリスクの言葉が脳裏から離れない。



─皇帝に気付かれたようです─



帰り道に自分達をしつこくつけ回したのも恐らくその使い魔だろう。



このままじゃ見つかるのも時間の問題だ。



溜め息をついて目を閉じる。



…にしてもミカエルがそんな知らせを持って来るとはね…



伝達役ならガブリエルのはずなのにミカエルが来たことに疑問を感じる。

しかも自分を心配だからってだけで毛嫌いしているバジリスクの元を訪れるだろうか?



あの腹黒天使の事だ。きっと何か裏がある。



ガブリエルに聞けば済む話なのだが…



隣で眠る忍が寝返りを打って身じろいだ。



「…」



右京は自分に背中を向けて寝ている彼女の長い髪に指を通した。


露わになった艶めかしい首筋に唇を這わす。




そばに居てと泣いた忍を思い出して胸がズキッと痛んだ。



…忍のそばを離れたくない…



今までも彼女は十分我慢していたし、これからもそれは変わらない。


ならばせめて手が届く今は離れたくない。



忍はくすぐったそうに首をすくめた。


起きるかと思ったがぐっすり眠っているらしい。


「ホント、可愛すぎ。」


ついちょっかいを出したくなって、寝間着の襟刳り指で引っ張ってみる。


「しーのぶ」



寝ぼけて「なぁにぃ」なんて返事をしてるが半分夢の中だろう。



「大好きだよ。」



耳元でそう言うと忍はクスリと笑って「ばか」と小さく囁いた。



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