とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
ピピピピッ…ピピピピッ…
右京は聞き覚えのある電子音にまどろみながら手を伸ばしてそれを止めた。
…目覚まし時計、あんな音だったけ?
ぼんやりそう考えて忍の時計のアラームだと理解すると、隣で寝て居るだろう彼女に手を伸ばした。
…あれ…いない…
右京はゆっくり上体を起こし忍の姿を探す。
隣の部屋からパタパタと足が聞こえて忍が顔を出した。
「おはよう、右京!」
「…なんで起こしてくれないの…」
「ちゃんと目覚ましかけてあげたじゃない。」
ムッと口を尖らせて右京は不満そうな顔をしてまた布団に潜った。
「こら!また寝るつもり!?」
「…やり直し。」
「はぁ?何言ってんの?」
「“ちゃんと”起こしてくれないと起きれない。」
「意味わかんない…」
「早く起こして!」
そう言う右京に忍はため息をついて枕元まで来るとベットの縁に腰を降ろした。
「どーして欲しいの?」
「好きなように起こして。…優しくね?」
「ぷッ…優しくって何よ…」
仰向けで行儀よく目を瞑ってじっと起こしてくれるのを待つ右京に忍は笑い堪える。
銀髪をそっと撫でて顔を近付け囁く様に「右京…」と声を掛けた。