とある堕天使のモノガタリⅡ ~MIDRASH~




バジリスクは宮殿の外に突然現れた気配に顔を上げた。



主人が留守の間だけ座る事を許された玉座からゆっくり立ち上がる。



─…ハニエル様でございますか?



『やぁ、久しぶりだね。ウリエル様の使いで来た。入れてくれないか?』



その言葉に頷き重く軋む門を開いた。



コツコツと歩いて来る4枚の翼を持つ天使と…



『…ハニエル様。そちらは?』


『ああ、これは私の連れだ。』



リサをバジリスクの前に差し出す。



リサは漆黒の翼をはためかせた銀髪の美女に『うっ』と言葉を詰まらせた。



…なにこの美人は…



彼女はリサに顔を近付け『…セイレーンですか…』と呟いた。



『さすがだね、バジリスク。』


『バジリスクって…あのバジリスク!?』



無表情の美女は『いかにも』と応えて冷たい視線をリサに向けた。



こっ…怖ッ!!



どうぞこちらへと促すバジリスクの後を追って歩き出したハニエルはリサに『どうした?』と首を傾げた。



『あれは何!?』


『何ってバジリスクだよ。』


『じゃなくて、バジリスクがなんでここに居るのよ!』


『ああ、彼女はウリエル様の従者だ。』


『バジリスクが!?…なんて恐ろしいのを従者にしてんのよ…』


『そうかい?とてもいい子だよ。』



リサはとてもそうは思えず躊躇しながらハニエルの後を追った。




< 431 / 474 >

この作品をシェア

pagetop