とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
奥の応接間に通されハニエルはリサの為に椅子を引いた。
自分も隣に座るとバジリスクがティーセットを持って来てお茶を入れる様子を見ながら微笑んだ。
『バージのお茶は久しぶりだ。』
『粗茶ですがどうぞ。お砂糖は一つでしたね?』
『覚えててくれたんだ…』
そんな二人の会話を黙って聞いていたリサは軽くハニエルを睨んだ。
…面白くない…
親しげにバジリスクをバージと呼ぶハニエルが楽しそうにしているのが不愉快である。
バジリスクの方はと言えば、さっきと変わらない無表情を決め込んでいて何を考えているのか読めない。
『人間界に思念を送ったそうだね?ちょっと確認したいんだけど、ミカエル様が来たって本当かい?』
『はい。正直何故あの方が来たのかわかりません。もしかしたら…何か問題が起きて私を疑って居るのかもしれません。』
それを聞いていたリサは『ねぇ、あなた』とバジリスクに向かって口を開いた。
『何故そう思うの?疑われるような事をしたの?』
その問いにバジリスクは真っ赤な瞳をギロリと動かした。
思わず縮み上がってハニエルにしがみつく。
『いいえ。身に覚えがありません。』
『なら、そんなに構える必要ないんじゃない…デスカ…』
思わず怯んで変な言葉遣いになったリサにハニエルが肩を震わせて笑った。