とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
ジムは『たまげた!』と言うと右京の後を追って来た。
『お前やるじゃねーか!』
『このくらいならお安いご用意だよ。』
トラックに積み込むと叔父が声を張り上げて右京を呼んだ。
「ここの家具とあっちのコンテナもだ。
コンテナは割れ物だから注意しろよ?」
「りょーかい、ボス!」
叔父は走って行く右京の後ろ姿を見て小さく笑った。
小一時間もすると作業は無事完了した。
荷物を乗せたトラックが出発したのを見て一同ホッと息をついた。
『ボスにこんなたくましいセガレが居たとはな~』
『留学中でこっちに居るんだ。
休みの間はしばらくこき使えるぞ!』
『それは勘弁してくれよ…』
ジムは笑いながら右京の肩に腕を回すと、『また頼むよ』としゃがれた声で言った。
『しっかしウキョー、お前なかなかのハンサムだな。
その若さなら女の5人や10人いるだろ?』
『俺は一途なの!』
『うちに娘が居たら婿に欲しいくらいだ!』
『ジムが義父とか無理!
父親はボスだけで充分だよ。』
右京は叔父を横目に見てニィッと笑うと『調子に乗るな!』と頭を殴られた。
だが“セガレ”だと言われても叔父は否定しなかった。
それが右京は嬉しかった。
ちょっと期待してもいいかな…
帰りの車の中で右京はそんな事を考えながら叔父の横顔を見て微笑んだのだった。