とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
野望
気を失った忍を抱き抱えると炎の向こうに感じる邪気を睨みながら窓から外へ抜け出す。
「潤!いつまで寝ている!お前の役目はなんだ!!」
数秒後右京の隣に傷だらけの小柄な悪魔が現れた。
「…申し訳ございません…まさか皇帝が来るとは…思っていませんでした…」
「言い訳は聞かない。忍を安全な所に…!
同じ失敗を繰り返すなよ…?
次やったら…俺がお前を殺す。」
初めて見る右京の紅い右目に潤は背筋が凍りついた。
「は…はい!」
忍がその場を離れたのを確認すると、右京の全身を風が覆い始めた。
燃え盛る炎の壁が鎮火していくのを見て右京は舌打ちした。
窓枠に足を掛けてヌッと顔を出した悪魔が右京を見てニヤリと笑った。
『ウリエル…久しぶりだなぁ…まずはお前に会いに来ようと決めていたんだよ…』
『俺は…その面を二度と見たくなかったよ。』
『旧友にそんな寂しい台詞を吐くもんじゃない。』
“旧友”という単語に右京…基、ウリエルは片眉を吊り上げた。
『お前と友だった記憶はない。』
そう言うとルシファーは『やれやれ』とおどけてみせた。
『ああ、そういえば書物の件は助かった…
まさかこんなにすんなり手に入るとは思わなかったよ…』
そう言ってクスクス笑うルシファーにウリエルは眉を寄せた。