とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
『お前が動いてくれたお陰で手下が目立たずに済んだ。』
『…あの本は何処にある…』
『ククク…大事に使わせて貰うつもりだよ。
翼もこうしてまた手に入った事だしね。』
『…俺の記憶が正しければお前は翼があったと思うんだが…
そうか、お前人間みたいな格好だったのか…』
ルシファーはピクリと眉を動かし軽く腕を振った。
正面に飛んで来たそれを『おっと』と避けてウリエルはニヤリと笑った。
『お前には翼は必要ない。どうせまたタルタロスに行くのだからな!』
ルシファーは不適な笑みを浮かべて真っ赤な瞳に光を宿した。
次の瞬間、ルシファーが視界から消えた。
『あそこには二度と行かない。』
耳元でルシファーの声が聞こえ思わず身体が硬直する。
なっ…!?…はやい!!
『…よっぽど嫌な思い出があるみてーだな…』
『タルタロスからガイアに抜ける途中でカオスに捕まってねぇ…
知っているかい、ウリエル…
カオスは一枚一枚翼を引き千切るんだよ。』
そういう事か…
『ふふふ…カオスに…そうか、なるほどねぇ』
さすがのルシファーも神には適わないらしい。
クスクス笑うウリエルにルシファーはあからさまに不機嫌な顔をした。