とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
ルシファーがウリエルの翼を鷲掴みにしてグイッと引っ張る。
『いてぇな…放せよ…』
『お前も同じ苦痛を味わってみるか?』
冗談じゃねー!
動揺したらルシファーを喜ばせるだけだ。
さとられてはいけない。
平静を装い、思いっきり羽ばたいてその手をはね除けた。
『そんなにムキになる事はないではないか。』
『その手で俺に触れるな。』
ウリエルの翼に叩かれて指先にできた切傷を舐めながらルシファーはニヤニヤと不気味に笑った。
『さっきの人間の女…あれも気が強かったな?
ククク…気が強い女は嫌いじゃない。
屈伏させて泣き叫ぶ姿を見る楽しみがある…』
『アイツに指一本でも触れたら許さねぇ…』
楽しそうに笑うルシファーをウリエルは正面から睨む。
『ウリエル。取引しないか?』
『…なんだと?』
『私はあの女に手を出さない代わりに、お前が私の配下になればいい。』
『…やはり狙いは俺か…
断ると言ったら?』
『…力でねじ伏せるまでだ。』
予想していた答えにウリエルは溜め息を付いた。
『ルシファー…お前は変わらないな…』
『それは誉めているのか?』
『力しか脳のない愚かなヤツだと言ってるんだよ!』
『黙れ!!』
ウリエルの言葉に逆上したルシファーの周りに黒い渦が立ち込める。