とある堕天使のモノガタリⅡ ~MIDRASH~






黄泉の門まで戻って来たハニエルはウリエルの従者であるバジリスクに事情を説明した。



バジリスクはそれを黙って聞きながら、ハニエルに背を向けた。


そして『そうですか…』とつぶやくと振り向かずに続けた。



『ウリエル様は無事でしょう。
…あの方はただ黙ってやられる様なお方ではありませんから。』



表情は見えないがその背中は痛々しかった。


ハニエルは自分が戻るまでバジリスクについていて欲しいとリサに伝えた。



『ええ…もちろんそうするわ。』



だから早く行けと言うようにリサはハニエルの背中を押した。




『バジリスク…大丈夫?』


『…とても嫌な予感はしたんです…』



力なくそう小さな声で言うとバジリスクは床に膝を着いた。



リサは慌てて駆け寄るとバジリスクの肩を抱いた。



泣いているのかと思ったが、彼女は涙を見せなかった。


『バジリスク…?』


『私には祈る事しか出来ません。

この場をウリエル様より任されていますから…』


どんなに飛び出して行きたいと思っても、どんなに会いたいと思ってもその感情を押し殺すバジリスクを見てリサは泣いた。



『何故貴方が泣くのです?』


『あんたが泣かないから代わりに泣いてやってんのよ!』



バジリスクはその言葉に少し表情を緩めて『ありがとう』と呟いた。



ウリエル様…


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