とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
潤は意識を手放した忍を抱いて静かにベットに寝かせた。
真っ赤に腫れた目元を軽く指でなぞる。
ここ数日で忍は一気に衰弱していった。
食事すらまともに口にしない。
そんな彼女にみんな腫れ物に触るように接する。
ショックを受けているのは忍だけではない。
彼を取り巻いていた誰もが消息を絶った右京を捜していた。
潤は眠る忍の傍らに膝を着いて彼女の手を握った。
「忍様…右京様は何処かで迷って居るんでしょう…きっと逢えますよ。」
微かに瞼を動かしたが、そのまましばらく目を覚まさなかった。
その夜ニックがアパートを訪れた時、忍は部屋にいなかった。
『シノブは?』
『多分いつもの公園だと思います。』
それを聞いてニックは『そうか』と言って部屋を後にした。
公園の広場はライトアップされ、普段とは違った雰囲気を醸し出していた。
聖歌隊の歌声が聞こえて来て今日がクリスマスイヴだった事を思い出した。
広場の階段に座って居る忍を見付けて隣に腰を下ろす。
忍は白い息を吐きながら夜空を黙って見つめた。
“クリスマスを忍と過ごせるのが嬉しい”
そう言っていたのに…
「右京の馬鹿…」
思わず愚痴を呟くと隣に座っていたニックが笑った。
『あいつ怒るぞー』
そう茶化すニックに忍は弱々しい笑みを返した。