とある堕天使のモノガタリⅡ ~MIDRASH~


右京がその場所に着いたのは20分程後の事だった。

装着していたインカムで虎太郎が川の東側に居たクー・シーを排除したのが分かった。

西側に着くと右京は深めに被ったフードの奥からグリーンアイを動かす。

辺りを見回しながら小声で『到着した。』と呟く様に言った。


『辺りの様子はどうだ?』

『…特に異常ない。北に向かいながらバーを調べる。』

『了解』


ロイと短い会話をして北へゆっくり歩き出した。



まだ時間が早いせいか、人通りもそこそこあった。


右京はとりあえず一番近くのバーへ足を踏み入れた。


ステージでは渋めの黒人男性がジャズを奏でていた。


ここじゃないのか…


しばらく店内を見回し出口に向かった時、客の会話が耳に入って来た。


『…~だから俺はこっちが気に入ってんだ』

『でも若い美女につられて客が増えてるって話じゃないか。』

『だろうな。一度見かけたがかなりの美女だったぜ?』


右京はその客に近付くとさり気なく話し掛けた。


『なぁ、ちょっと聞きたいんだけど、その美女って最近噂の歌手の事か?』

『ああ、髪の長い綺麗な女だったよ。』

『どこに行けば会えるかな?』

『ハッハッハッ!お前も見たいのか!あの女ならサムの店に居るぜ!』


サムの店はそこから3ブロック先の路地を入った所にあると教えてくれた。


< 49 / 474 >

この作品をシェア

pagetop