とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
右京がその場所に着いたのは20分程後の事だった。
装着していたインカムで虎太郎が川の東側に居たクー・シーを排除したのが分かった。
西側に着くと右京は深めに被ったフードの奥からグリーンアイを動かす。
辺りを見回しながら小声で『到着した。』と呟く様に言った。
『辺りの様子はどうだ?』
『…特に異常ない。北に向かいながらバーを調べる。』
『了解』
ロイと短い会話をして北へゆっくり歩き出した。
まだ時間が早いせいか、人通りもそこそこあった。
右京はとりあえず一番近くのバーへ足を踏み入れた。
ステージでは渋めの黒人男性がジャズを奏でていた。
ここじゃないのか…
しばらく店内を見回し出口に向かった時、客の会話が耳に入って来た。
『…~だから俺はこっちが気に入ってんだ』
『でも若い美女につられて客が増えてるって話じゃないか。』
『だろうな。一度見かけたがかなりの美女だったぜ?』
右京はその客に近付くとさり気なく話し掛けた。
『なぁ、ちょっと聞きたいんだけど、その美女って最近噂の歌手の事か?』
『ああ、髪の長い綺麗な女だったよ。』
『どこに行けば会えるかな?』
『ハッハッハッ!お前も見たいのか!あの女ならサムの店に居るぜ!』
サムの店はそこから3ブロック先の路地を入った所にあると教えてくれた。