とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
幸せな夢の続きは諦め、右京は自分のクローゼットから着替えを出した。
突然部屋の扉が開き、チラッと目を向けてげんなりした。
「右京!起きた!?」
「…起きたんじゃない、起こされたんだ!」
「だろうな。マイクから“クロウを起こした”って電話が来た。」
みんなクロサキと発音するのが難しいのか、右京の事を“クロウ”と呼ぶ。
Crow(カラス)なんてぴったりの呼び名じゃないか…
「飯食いに行こうぜ!」
そう言って虎太郎は先に食堂へ向かった。
右京は敢えて急ぐでもなく、服を着ると部屋を出た。
すぐ後ろから来たジェイクに肩を掴まれた。
『ヒューガ来ただろ?』
『ああ、マイクが電話したらしいな。』
『貸しだぜ?今日付き合えよ』
『貸しってなんだよ。頼んでねーし。』
ジェイクは太い声で笑いながら右京の銀髪を撫でた。
『しっかし、お前英語うまくなったな~
最初の頃喋る人形かと思ったぜ。』
『仕方ないだろ?日本語が母国語なんだから。』
『フランス人みたいなツラしてんのにな~
聞いたら日本人だっつーから驚いた!』
日本では目立っていた容姿もここではさほど目立つ事なく、寮では男しかいなかったので色々と快適だ。