とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
女は自分の後ろにあったライトを“力”で浮遊させると右京に向かって投げつけた。
とっさに飛び退いてかわすと女はゆらりと立ち上がった。
『どうやら歌姫はご乱心のようだ』
『やれやれ…キミはもう少しレディに対するマナーを身に付けた方がいい…』
『アラン…レディはライトをなげつけたりしない。』
女は更にスピーカーを“力”で投げつけた。
『あっぶ!?…スピーカーも投げつけたしないと思う…』
『ちょっとオイタが過ぎるね…
優しくお仕置きをしてあげてくれ。』
その言葉にニヤリと笑うと、再び飛んできたマイクスタンドを素手で受け止め『ラジャー』と答えた。
右京はマイクスタンドの脚部分を外すとパイプを肩に担いでフードを脱いだ。
『お説教タイムだ。』
『ちっ…クー・シー!!』
女が叫ぶとステージ裏の暗がりから真っ白な獣が姿を現した。
唸りながら女を庇うようにクー・シーは右京の前に立ちはだかった。
『また会ったね』
…スマナイガ 相手ヲサセテモラウ…
そう言うとクー・シーは凄い勢いで突出をして来た。
右京はパイプを左腰付近で構えるとクー・シーの鋭利な爪を抜刀術で弾き返した。
『本気でかかって来ないと怪我するぜ?』
…ソノヨウダ…
口角を上げる右京にクー・シーは喉を鳴らした。