とある堕天使のモノガタリⅡ ~MIDRASH~


女は自分の後ろにあったライトを“力”で浮遊させると右京に向かって投げつけた。


とっさに飛び退いてかわすと女はゆらりと立ち上がった。


『どうやら歌姫はご乱心のようだ』

『やれやれ…キミはもう少しレディに対するマナーを身に付けた方がいい…』

『アラン…レディはライトをなげつけたりしない。』


女は更にスピーカーを“力”で投げつけた。


『あっぶ!?…スピーカーも投げつけたしないと思う…』

『ちょっとオイタが過ぎるね…

優しくお仕置きをしてあげてくれ。』


その言葉にニヤリと笑うと、再び飛んできたマイクスタンドを素手で受け止め『ラジャー』と答えた。



右京はマイクスタンドの脚部分を外すとパイプを肩に担いでフードを脱いだ。


『お説教タイムだ。』

『ちっ…クー・シー!!』

女が叫ぶとステージ裏の暗がりから真っ白な獣が姿を現した。


唸りながら女を庇うようにクー・シーは右京の前に立ちはだかった。


『また会ったね』


…スマナイガ 相手ヲサセテモラウ…



そう言うとクー・シーは凄い勢いで突出をして来た。


右京はパイプを左腰付近で構えるとクー・シーの鋭利な爪を抜刀術で弾き返した。


『本気でかかって来ないと怪我するぜ?』


…ソノヨウダ…


口角を上げる右京にクー・シーは喉を鳴らした。


< 53 / 474 >

この作品をシェア

pagetop