とある堕天使のモノガタリⅡ ~MIDRASH~



クー・シーはその大きな体に似合わない素早さで右へ左へと動きながら向かって来た。


それに動じる事なく右京は身を低くくして攻撃を避けた。


クー・シーはすぐに体勢を立て直し、右京の手にしていたパイプに噛み付いた。


そして体を揺らすとそのパイプを右京の手からもぎ取った。


さすがに力が強いな…


『クー!!やっちゃいなさい!!』


女の一言にクー・シーは雄叫びを上げると上体を上げた。

その口から赤々と燃える炎が見えた。


「げっ!?それは反則じゃねーの!?」


次の瞬間その口から右京に向けて炎を吐き出した。


クソッ!避けきれない!


とっさに右京は風を纏って6枚の翼を出すと、思いっきり羽ばたいた。


…!?…


逆風で炎はクー・シーの体を包み込んだ。

ブルブルと燃える炎を払い落とすとクー・シーは右京を真っ直ぐ見据えた。


…漆黒ノ羽根…堕天使カ!!


『なんですって!?…そんな…まさか!』


ゆっくり着地する右京に唖然としながら女はガクッと両膝をついた。


『ウリエル様!』


店の入口からその様子に気付いた虎太郎は右京に走り寄った。


『お遊びは止めだ。お前の名前を教えてもらおう。』


女は完全に戦意を喪失してペタリとその場に座り込んだ。



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