とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
ここまで打ち解ける様になるまでにも色々あった。
まず新参者に対する手の込んだイタズラは酷かった。
今朝の爆音なんて可愛いもので、朝一番で突然担がれプールに投げ込まれた事もあった。
ある日無理やりバーに連れて行かれ、死ぬほど飲まされた事もあった。
お酒の強いジェイクと飲み比べだと言い出し、肝心なジェイクが先に酔い潰れて計画が台無しになった。
あの時辺りからジェイクに気に入られた右京は何かと絡まれる事が多い。
食堂では虎太郎がマイクとバカ騒ぎしていた。
『静かに食べれないのか、あいつらは…』
『まだ大人しい方だろ。』
右京にそう返してジェイクはマイクの隣に座った。
『クロウ、遅いじゃないか。君のダーリンを借りていたよ。』
『やめろよ、ダーリンとか寒気がする。』
『ところでもうすぐ夏休みだな!
みんな家に帰るのか?』
『ああ、俺とマイクは帰るぜ?お前らは?』
『俺はロンドンの叔父のとこだ。昨日帰って来いって言われたし。』
『ヒューガは?』
『みんないないなら俺も帰るかな~』
マイクは何か思いついたようにニヤリと笑った。
『どうせならこの夏休み、楽しい事したくないか?』
『でた…マイクの“楽しい事”!』
『何をするんだ?』
『…それは』
勿体付けた言い方に一同身を乗り出した。
『…まだ決めてない。』
『ふざけんな!期待したじゃねーか!』
『いっつもこれだ!』
「右京、マイクしばいていい~?」
『ただ実家に戻るだけとか、つまんないだろ!?
つか、ヒューガ!どさくさに紛れて日本語使うな!
何言ってるかわかんないじゃないか!』
あまりの声の大きさにみんなの視線が集中したが、「またアイツらか」とそれ程気にもされなかった。