とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
それからクー・シーの目撃情報もなく、歌姫も忽然と消えサムの店には姿を現さなかった。
しばらく平和な日々が続き、いつもの日常に戻った。
右京の叔父達は無事日本に帰国し、新学期が始まった。
前日遅くまで日本にいる恋人とSkypeで話をしていたせいで、その日はなかなか起きれなかった。
久しぶりに聞いた彼女の声に癒やされ眠りにつくと幸せな夢が見れた。
9月に入ってだいぶ涼しくなったが、その朝は右京は暑くて寝返りを打った。
腕に重みを感じて夢と現実がごっちゃになった。
「忍…今何時…?」
そう言いながら腕に忍を抱き締めた。
「…」
ふと違和感を感じた。
…忍ってこんなに小さかったっけ?…
そこでその人物が忍ではない事に気付いてガバッと飛び起きた。
『なっ…なっ…なんでお前が居る!?』
目をこすりながら起き上がるその女を怪訝な目で睨みながら右京は後退った。
その時ルームメイトが部屋に帰って来た。
『おはよう、クロウ。
やっと起きたのかい?』
『ア…アラン…なんでコイツがここにいる!?』
アランは右京の布団にいる女を見つめて『さあ…』と笑った。