とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
遠恋“日本→イギリス”
忍は今日もバイト先に到着すると制服に着替えて廊下に出た。
「おはよう、忍ちゃん。」
「おはよう!堤くん。」
2ヶ月程前から新しくキッチンスタッフとして入った堤に挨拶をしてフロアへと急いだ。
最近バイトの日数を増やしたせいか、堤と出勤日がよく被る。
「あれ?忍今日もなの?」
「美鈴おはよう!増やしたの。稼ぎたくてね。」
そう言うと「なるほど」とにやけながら耳元に顔を近付けた。
「彼氏に会いに行くの?」
「まぁね!なかなか帰って来ないんだもん…年末までに旅費貯めたいの。」
先月両親は日本に帰って来たが、右京は結局イギリスから帰国する気は無いらしかった。
時々Skypeで話はするものの、やはり会いたいと思うのはずっと一番近くに居たからだろう。
…今頃なにしてんだか…
「浮気してたりしてね~」
「まさか!…あるかな?…」
「ぷっ…冗談よ!でもまぁ、あってもおかしくはない…かな?」
「う…不安になって来た…」
“右京に限ってそれはない”と思っているのだが、その手の事は離れていたら未知の部分だ。
「そんな心配しなくても大丈夫だとは思うよ?
あの彼、隠し事下手そうだもん。」
そう笑う美鈴に「だよね!」と言って忍も笑った。