とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
「送ってやるよ。ほら!」
そう言ってゴウはヘルメットを忍に投げて寄越した。
忍は内心ホッとした。
堤は嫌いではないが、一緒に帰るとなると警戒してしまう。
その点ゴウの方が信用出来る。
「ありがとう!じゃあお願いしようかな~
堤くん、またね」
忍は堤に手を振ってゴウのバイクに跨った。
途中、信号待ちで一旦停車するとゴウは後ろを振り返った。
「助かったって顔してたな?」
「え!?そんなに顔に出てた?」
そう答えた忍を見てゴウは少し笑った様だった。
家に着くと去り際にゴウは「気をつけろよ」と言った。
「あの冴えない男、下心丸出しだったぜ?」
「…だよね…」
「俺達を頼っても構わないから、いつでも困ったら言えよ?」
「ありがとう!」
ゴウが軽く手を上げて去って行くのをしばらく眺め、溜め息をついた。
「困ったな…」
忍はポツリと呟いて家に入った。
忍に言い寄って来る男は堤が初めてではなかった。
特に右京が日本を離れてしばらくは頻繁に声をかけられた。
セリに言わせると“あわよくばと思っている”らしい…
「なんで私なのよ…」
自分の部屋に入ってすぐベットに寝転がった。
イライラした気持ちを落ち着けるため着替えて道場に向かう。