とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
モヤモヤした気持ちのままバイトをこなす。
いつもはしないようなミスを連発して、さすがに店長にも注意されて更に凹んだ。
バイトも終わって帰ろうかという時、今日もキッチンに入っていた堤に呼び止められた。
「忍ちゃん、どうしたの!?」
「堤くん…ちょっとね…」
「悩みあるなら聞くよ?」
そんな優しい言葉に思わず涙ぐんだ。
「え!?…ちょっ…泣かないでよ!」
「泣かないよ…泣いてなんかやらない!」
涙が零れないようにこらえながら、言うと堤に苦笑いされた。
「…堤くん…今日暇?」
「暇だけど…」
「飲みに行かない?」
思いがけない忍の誘いに嬉しそうな表情の堤は「喜んで」と笑った。
駅の逆側にあるaxelまで来ると堤は一瞬躊躇した。
「しっ…忍ちゃん…ここで飲むの!?」
「ここが一番落ち着くの!」
「ここってクラブだよね?もっと静かな店の方が良くない?」
「…嫌なら別に独りで飲むからいいよ…」
オロオロする堤を置いてスタスタと店に入って行く忍の後を堤は慌てて追った。
「あれ!?忍さんじゃないっすか!」
「ジンヤ君、久しぶり!」
「珍しいっすね~黒崎さんは元気っすか!?」
「…今右京の名前出さないで!」
「あ~…喧嘩したんすね…」
ジンヤは溜め息をつくと「何か作りますから」とシェイカーを振り始めた。