とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
その場はそれで済んだが、マイクの事だからとてつもない事を言い出すだろう。
そう考えると少し楽しみでもあった。
日本にいるときはただでさえ目立つ為、ここまで騒ぐ事は出来なかった。
「右京、今日snake行くの?」
「ジェイが付き合えって言ってたからな。
連れてかれるかもしれん。」
snakeはジェイクの一番上の兄が経営するバーで、週末になると酒の強い右京は決まって拉致される。
「昨日遅かったから今日はパスしたいんだけどな~」
そう言って大きな欠伸をすると虎太郎は「お疲れさん」と笑った。
「俺はP2に行くから、時間あったら寄って?」
「了解~」
右京が返事すると、虎太郎は電子工学の講義を受ける為走って行った。
その後ろ姿を見送って彼も歩き出した。
キャンパスを歩きながら移動すると、すれ違う学生が声をかけて来る。
人種も肌の色もバラバラで右京もすっかりそこに溶け込んでいた。
ここでは自分も一人の人間として普通に生活出来た。
“ここでは”だけど…
『急がないと遅刻だぞ!』
『ああ、今行くよ!』
仲間にそう言うと右京は風を切って走り出した。
今日もそうやって彼の日常が始まった。