とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
まだ終わらないかに見えた痴話喧嘩の途中で忍は泣き出した。
それを見ていたガクはあえて何も言わなかった。
堤は忍が気の毒になったが、ゴウに「ほっといて大丈夫」と言われ何も出来なかった。
「忍ちゃんの扱いは黒崎に任せとけ。」
「…そういえば忍ちゃんと名字一緒なんですね…」
「知らなかったのか?あの二人は“いとこ”同士だぜ?
全く似てないが…」
「“いとこ”!?」
「ああ、血のつながりはないけど…
つか、黒崎が日本人かどうかも怪しいよな!」
「どうみても外国人だしな~」
「…謎だらけだ…」
堤は自分の中の“黒崎右京”がどんどん変化し、思考回路が追い付かなくなって来たのを感じた。
「見てみたいです…純粋に…」
「あそこに写真があるだろ?
客がどうしてもって言うから飾ってんだ。」
堤は近付いてその写真を眺めた。
カウンターの前に並ぶバーテン達の写真で、真ん中がガクだと判った。
その隣りに写っている、カウンター席に座った足の長い銀髪の男が忍の彼氏だとすぐに理解出来た。
「…この人が“黒崎右京”…」
「ムカつくくらいイケメンだろ?」
「忍ちゃんといちゃついてる写真なかったっけ?」
「忍ちゃんの写ってる写真は一枚残らず黒崎が持って行きやがったよ!」
そんなガク達の会話も耳に入らない程、堤は写真の右京に惹きつけられた。
これがカリスマ性というものなのだろうか…