とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
どうやっても自分は勝てそうにない…
そう思いながら忍を見ると、真っ赤な顔で幸せそうに笑っていた。
「…お似合いですね…悔しいけど…」
「ああ、絵に描いたようなカップルだよ。」
自分なんか隙入る場所がないと堤は思った。
「生で見たいだろ?あの二人を…」
「はい。」
「年末帰って来るってよ。だが、忍ちゃんには内緒だ。」
「教えてやれよ!」
「アイツが言うなっつーから仕方ないだろ?」
年末…“黒崎右京”が帰って来る…
堤は一度でいいから会ってみたいと思った。
きっとその気持ちを憧れって言うんだろな…
電話が終わったらしい忍はすっかり元気を取り戻した。
「泣いたらスッキリしちゃった。」
「良かったじゃねーか。」
「ありがとう、ガクさん。
あと…いっぱい話しちゃってごめんなさい…」
「気にすんな。どーって事ない。」
「堤くんもごめんね?もう大丈夫だよ!」
そう言って忍は笑顔を見せた。
その笑顔は堤の好きな忍の表情だった。
「きっと彼にしかそんな顔をさせること出来ないんだろうな…」
ポツリと零した言葉に忍は首を傾げた。
「なんでもないよ。俺そろそろ帰るけど、忍ちゃんは?」
「もう少しここに居るよ。
気をつけてね!」
そう言う忍に手を振って堤は店を出て行った。