とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
“強欲”
その日、右京はキャンパスを歩きながら図書館へ移動していた。
午後の日差しを受けて大きな欠伸を一つすると『寝不足か?』と声をかけられた。
『やぁアラン…リサのせいで寝不足だよ…』
『ああ…彼女には手を焼かされるね…』
昨日も男子寮に忍び込んだリサは当たり前の様に右京の部屋に居座った。
おかげでレポートが思うように進まず、クー・シーを呼び出して連れて帰ってもらう頃には夜中の3時を越えていた。
クー・シーは“スマナイ”と平謝りで怒るに怒れなかったのだ。
『そういえばシノブとも彼女のせいで口論になってたね?』
『あ~…あれは大変だったよ…』
喧嘩の発端はリサの存在だったが、心配性な性格のせいで更に忍を怒らせた。
結局、傍で守ってやれない苛立ちを忍にぶつけてしまったと後悔したのだが…
『お前の辛気くさい顔は見たくない!』
と、あの時の右京は周りが驚く程落ち込んでいた。
『仲直りしたんだろ?』
『あ?…ああ。』
日本の仲間をも巻き込んだあの騒動を思い出した。