とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
秘密結社“P2”
講堂に入ると右京はアランの姿を見つけ、隣に座った。
『アラン、お前朝逃げただろ…』
『やぁ、クロウ。
逃げた訳じゃない。避難したのさ。』
そう言ってアランは眼鏡の奥の茶色く大きな瞳を細めて優雅に笑った。
『今朝はどうやって起こされた?』
『とても心地の良い音楽で、目覚めもスッキリだ!』
『ククク…それは良かった。』
『それより、昨日噂の繁華街に行ってみた。』
『…噂はどうだった?』
『“本物”だったよ。』
『なるほど…』
このアランと言う男は右京達同様、裏の顔を持っていた。
それを知ったのは数ヶ月前の事…
寮生活を始めてすぐ右京と虎太郎は近くの繁華街へブラリと出掛けた。
その土地に慣れていない彼らは街を散策していた。
「虎太郎…あの印はなんだ?」
「印?どれ?」
それは路地の壁に小さく彫られた刻印だった。
「ホントだ…」
気をつけて見てみると意外とあちこちに刻印は存在した。
虎太郎はデジカメでそれを撮ると地図に印を付けた。
「帰ったら調べてみるよ。」
翌日、虎太郎は意気揚々と右京に電話をかけて来た。
「分かったぞ!あれは秘密結社の刻印だった。」
「秘密結社だと!?そんなもの本当に存在したんだ…」
「地図から大体の場所を突き止めた。
裏サイトに侵入したらさ…」
「お前、またハッキングしたのか!?」
大学のPCからハッキングしたおかげで、IPアドレスから即逆探知されたのは言うまでもないだろう。