とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
リサは右京が寮に入ってもそこを動けなかった。
『分かってるわよ…私に興味ない事くらい…』
今まで自分に振り向かなかった男は居なかった。
だが、このクロウと呼ばれる男は全くリサに興味を示さなかった。
最初はただそれが悔しくて付き纏っていた。
もしかしたら、女自体に興味がないのかと疑った。
だが、この前クロウの部屋に行った時に嬉しそうに誰かと話す彼を見た。
話している言葉が異国の言葉だったので、自分の知らない人物だろう事は想像出来た。
ちょっと近付いて相手の声を聞いてみたら女だった。
その後『邪魔だから出て行け!』と怒鳴られ、リサはその女に負けたと感じた。
彼女にとって初めての屈辱だった…
『リサ?そこで何してるんだ?』
顔を上げると心配そうに覗き込んで来る男が居た。
『ヒューガ…』
『あ~また右京に振られたのか…』
『彼は今日寝不足で機嫌が悪かったみたいだしね…』
ヒューガとアランがそんな会話を交わすのをリサはぼんやり見つめた。
『こんな時間まで女の子が外に居たら危ないよ?』
アランは優しくそう言ってくれたが、リサの心は晴れなかった。
『アラン、後は引き受けるからいいよ』
ヒューガがそう言うとアランは『おやすみ』と言って寮に入って行った。