とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
『…それは興味深いね…』
『なにも無かったって言ってたぜ?』
『口ではなんとでも言える。それに…』
『…それに?』
『今回は何も無かったとしても、次回も何も無いとは限らない。』
そう言ってアランはニヤリと笑った。
『…それは凄く面白そうな展開だ。』
右京もつられて口角を上げた。
虎太郎は午前中の講義を終えると一旦寮に戻った。
『やっぱりまだ居た…』
虎太郎のラップトップを勝手にいじるリサは、上手く操作が出来ないらしくキーを連打していた。
『…俺のPCを壊さないでくれ…』
虎太郎はリサの後ろから手を伸ばしてパタンとPCを閉じると溜め息を付いた。
『お礼を言おうと思って待ってたの。』
『リサがお礼!?
…見返りが怖いからお礼はいいよ…』
『なっ…なによ!見返りなんて要らないわよ!』
それを聞いて意外そうな顔をする虎太郎にリサは半眼になった。
『なに、その顔…』
『…見返りを求めないセイレーンが居た事に驚いてるんだよ…』
『…気まぐれよ、ただの気まぐれ!』
そう言うリサに虎太郎は優しく微笑んだ。
『…昨日はありがとう…』
『どういたしまして。』
リサは窓を開けると出て行こうとして、ピタリと止まった。
『…どうした?』
虎太郎の言葉にリサは振り返って『あのね…』と口を開いた。
『…今度は…ヒューガに会いに来るよ…』
そう言い残すとリサは風と共に消えて行った。