シュガーレス・キス


『…多分、生き霊なのかなぁ?』


ハルは目を伏し目がちにさせながら話を続けた。


『身体はね、病院にあったよ。包帯でぐるぐる巻きにされてね』

「……………」

『びっくりしちゃった!目の前に私と同じ顔した人が寝てんだもん』


笑いながら話すハルとは裏腹に俺はそれを笑い飛ばせるほど軽い話だとは思わなかった。


何で、笑って話せるんだ。
包帯ぐるぐるとか結構深刻な話だろ。


事故ったのか。


そう聞くとハルは真顔になって首を横に振った。


『わかんない』

「…え?」

『記憶が、ないの。何にも覚えてない。思い出せるのは高校入学したところまで。あとは私が"ハル"って呼ばれてたことだけ』


僅かに微笑んだハルの瞳は笑ってなかった。泣いているように見えた。

もしかしたら気のせいかもしれないけれど。



『………大事なもの、なくしちゃったのかな…』


「ん?」

『ん?なんでもないよ?』



…何か呟いた気がしたんだけど。聞き取れなかったや。
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