シュガーレス・キス
『あの…ごめんね?』
「……」
朝のホームルームが終わったあと移動教室をいいことにトイレに行ってから行くと又もや嘘をついて屋上にきた。
12月の冷たい風が吹いて、俺は少し身震いをした。
流石にセーターにブレザーを着ているとはいえ、マフラーなしは寒い。
この寒さとハルの馬鹿な発言にムスッとしながら謝ってくるハルを見上げた。
ごめんね、じゃねぇよ。ばか。
ふざけんな。
俺がどんな目で見られるかわかってんのか。
「気をつけろよな。俺にとってお前の声は他の奴と同じように聞こえるんだから」
『……うん』
「変に思われるの俺だよ」
『…ごめんなさい』
シュン…と落ち込むハルに一瞬息詰まる。
そこまで落ち込まれると逆に俺が困るんだけど。
飼い主に怒られて縮こまる子犬みたい。俯きがちな目とかそっくり。タレ耳とか超似合いそう。
ていうか、何か俺が悪者みたいになってね?
おかしなことを頭の隅で思いながらハルを呼んだ。
「そんな顔すんなよ。喋るなって言ってる訳じゃないんだから」
『いいの?』
「ん?」
『私、悠那くんに喋りかけてもいいの?』
そんなことに許可がいるか?
俺は気をつけてって言っただけなんだけど。
ハルが不安そうに、でも嬉しそうに尋ねるから可笑しくて。
俺は笑うのを抑えて、代わりに微笑んだ。