シュガーレス・キス
「俺と2人きりの時だけな」
小さな約束。
俺とハルが初めて交わした些細な約束。
冷たい冬風が終わったあと吹いたのに暖かかったのは、きっとハルが抱きついてきたから。
「なんだよ、ハル」
『私、悠那くんのそうゆうさり気ない優しいとこ、好きかも』
「そりゃ、どーも」
『照れてる?』
「は?照れるわけないだろ」
『頬っぺた赤くなってるくせにぃ』
「分かってるなら言うなよ!」
俺が怒るとハルは直ぐさま離れて宙に浮かんだ。
サラサラと靡く黒髪。
目が合えば反らさず笑う大きな瞳。
『悠那くん』
こうやって呼ぶハルの声に俺の全てが支配されていくんだ。
「ハル」
『なに?』
「教室、戻ろうか」
おいで、と呼ぶように目を合わせると、ハルは大きく頷いた。
『うんっ!』
出会ったのは幽霊の美少女、ハル。
俺たちは、ここから始まった。