シュガーレス・キス
「香織ちゃんみたいな優しい彼女がいたら頑張れるんだけどな」
「何言ってるの」
「本当だよ。香織ちゃんはいつだって綺麗で良い女」
ボブカットがよく似合ってて、28歳には見えないし、子持ちとは思えないくらいだ。
「こんなおばさんでも綺麗なんて言われると嬉しいわ」
毎度ながら受け流しも完璧。
本気で言ってるんだけどきっとお世話としか思われてないんだろうなー。
教室の鍵を開けて去り際にポンと俺の頭に手を乗せた香織ちゃんを見つめた。
「高谷くんはやればできる子なんだから頑張って」
「…そうかな」
「私がちゃんとみてるよ」
一回俯かせた顔をもう一度上げると香織ちゃんは微笑んでいた。
最後に俺の髪をクシャクシャにしてどこかへ行ってしまった。