シュガーレス・キス
リビングに行ってて、とだけハルに言って俺もちょっとして仏間を出た。
ソファーに深く座るとハルは俺の目の前に立った。
『ご両親、いなかったんだね…』
「1年前に事故でなくなったんだ。トラックとの衝突事故。もうすぐ命日」
丁度この時期あたりに亡くなったんだよな。未だに信じられないけど。
これが受け入れがたい真実。
両親が嫌いなわけじゃなかった。
むしろ好きだった。
家族揃って食卓囲んで食べる母さんのご飯も美味しくて、テレビでスポーツ観戦して父さんと盛り上がって。
早めの思春期と反抗期が過ぎてたから仲は悪くなかった。
あんなに当たり前だと思っていた幸せは一気にぶち壊しだ。
どこにいったんだろう。
あの日の両親の眠った顔を思い出したら何故か悲しくなってきた。
今にも名前を呼んだら、目を覚ますかと思うくらいの綺麗な寝顔だった。
涙がじわじわと浮かんでくるもんだからソファーに頭を預けるように上を向いた。
『泣かないで…』
「お前のが…泣きそうな声してんぞ」
『……っ…だって…』
ほら、泣くなよ。
自分のことじゃないのに何でこいつは泣くんだ。
だから俺まで吊られちゃうんだよ。