シュガーレス・キス


『抱き締めてあげる』


両腕を広げて言ったハルに直ぐ様飛び込んだ。


暖かさも何も感じなかったけど抱き締められてる感じは確かにあった。


子供みたいに抱きついて、子供みたいにわんわん泣きたかったけど、声を押し殺して泣いた。



父さん、母さん。

こんなこと言うのはとてつもなく恥ずかしいけど。

―――寂しい。

誰もいない家は、寂しいんだ。


母さんの作るご飯も、父さんの帰ってくるただいまもない、温もりのない家は寂しいよ。


高校生にもなってこんなこと言ってる俺は馬鹿みたいだけど、家に帰る度にそう思う。



ハルがいなくなったら俺どうしたらいい?



どうしようもない不安を抱えながら、今はただ泣いた。


ハルはそんな俺を見ても笑うことせずに一緒に涙を流してくれて、ずっと俺の隣にいてくれたんだ。


頭を優しく撫でたり、ぎゅうっと力を入れて抱き寄せたり。

それが何より、嬉しかった。



ハル。

なぁ、ハル。
今、思ってることだけど。

俺さ、ハルがこうして今いてくれるから嬉しいんだ。

悲しい涙よりも安心した涙を流してる気がするよ。


側におまえがいてくれてるから。




だから、だからもう少し。

このままでいさせて。
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