シュガーレス・キス


「…何か、ごめん」


ズズッと鼻を啜ってハルに言った。


ハルはただ微笑んで首を振るだけ。まるで気にしてないよと言う感じに。


『ココア入れてあげようか』

「は…?」

『好きなんでしょ?飲んだらスッキリして落ち着くよ、きっと』


待っててとキッチンに向かったハルを目で追うと、材料を探しながら作り始めた。


…本当に凄いと思う。

幽霊がココア作るとか前代未聞なんだろうな。いや確実にだ。


幽霊じゃなくて、実は魔法使いだったりして。だから何でも触れたり力んだり出来るのかも。


『はい、ハル特性甘い甘いココアですっ』


ニコニコしながら俺の手元まで持ってきてくれたホットココアを「ありがとう」と言ってから飲んだ。


あー…うめぇ。
まじでスッキリする。
さっきまで泣いてたのが嘘みたいに落ち着いた。

ココアの力半端ねぇよ。



『美味しい?』

「うん。丁度良い甘さ。ありがとう」

『へへっ…よかったぁ!』


ふわりと柔らかく笑ったハルの顔に一瞬ドキッとした。


そして感じた。


見たことのあるような笑顔。
似たようなシチュエーション。


俺、こいつのこんな笑顔、今日初めてみたんじゃない。


少しだけ知ってる。

懐かしいと思うのは可笑しいかもしれないけど、懐かしいんだ。
< 43 / 49 >

この作品をシェア

pagetop