シュガーレス・キス
「…何か、ごめん」
ズズッと鼻を啜ってハルに言った。
ハルはただ微笑んで首を振るだけ。まるで気にしてないよと言う感じに。
『ココア入れてあげようか』
「は…?」
『好きなんでしょ?飲んだらスッキリして落ち着くよ、きっと』
待っててとキッチンに向かったハルを目で追うと、材料を探しながら作り始めた。
…本当に凄いと思う。
幽霊がココア作るとか前代未聞なんだろうな。いや確実にだ。
幽霊じゃなくて、実は魔法使いだったりして。だから何でも触れたり力んだり出来るのかも。
『はい、ハル特性甘い甘いココアですっ』
ニコニコしながら俺の手元まで持ってきてくれたホットココアを「ありがとう」と言ってから飲んだ。
あー…うめぇ。
まじでスッキリする。
さっきまで泣いてたのが嘘みたいに落ち着いた。
ココアの力半端ねぇよ。
『美味しい?』
「うん。丁度良い甘さ。ありがとう」
『へへっ…よかったぁ!』
ふわりと柔らかく笑ったハルの顔に一瞬ドキッとした。
そして感じた。
見たことのあるような笑顔。
似たようなシチュエーション。
俺、こいつのこんな笑顔、今日初めてみたんじゃない。
少しだけ知ってる。
懐かしいと思うのは可笑しいかもしれないけど、懐かしいんだ。