君の世界で私は、
01

 こんだけ名実共にナルシストだと世界って100倍くらい綺麗に見えたりするんだろうなー、と最初の頃は呆れを通り越して感心したのをよく覚えてる。
 今となっては「またか」と脱力したりキレたりしてるから感心してる余裕もないんだけど。

「まーひーろー。早くして、マジで」

『鏡の中のとっても素敵な自分』に今日も酔いしれる馬鹿を具現化したような男は、はぁ…とわざとらしいため息をついて私を見た。

「あのさ、柚葉(ゆずは)」
「なに。あー、うん。わかった。右がいいと思うよ、うん」

 私の適当な返事に「だよな」と真面目にうなずいた真紘(まひろ)はもう一度鏡を見て3分後に実にスッキリした笑顔で玄関から出てきた。

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