君の世界で私は、
私には両親がいない。お父さんは私が小さい頃に蒸発したから最初からいないようなものだし、お母さんは簡単言うと運悪く信号無視の車に轢かれて亡くなった。
もう少し言うと、犯人はまだ捕まってない。
それだけ。
「そりゃ、神崎家の支援はありがたいよ、本当に。ありがとう」
「俺は礼が聞きたいんじゃなくて、いつ戻ってくるか聞いてるんだけど?」
お母さんが亡くなってから高校に上がるまで、私は真紘のお母さんのご厚意で神崎家でお世話になっていた。
でも高校生だし自立しなきゃだしで神崎家を出たんだ。…とは言っても、生活費頂いてるんだけど。
「まー…いつかねー」
「チッ」
いつもの調子ではぐらかした私に本気で舌打ちした真紘は気持ち歩く速度を速めた。
「ところで今日のご予定は?」
「…帰って寝る」
「君ねー…。じゃあ夕飯作りに行ってあげるよ」
子供じゃないんだから、という言葉を飲み込んで私はため息交じりに彼を見上げる。