君の世界で私は、

 ちょっと考えたように視線を空に持ち上げた彼は、小さな声でちゃんと聞いてても忘れるようなどっかの国の料理名を挙げたけど私は軽く手を振った。

「そんな舌噛みそうな名前のメニューは管轄外です」
「期待はしてない。適当でいい」
「うん」

 ピキッとくるような一言にももう慣れっこな私はもう試験1週間前だということを思い出して付け足す。

「あと食べ終わったら勉強教えて」
「よし、わかった。その代わり泊まって行…「かない」

 真紘は適当にあしらっとくくらいの距離がちょうどいい。本気で付き合うと2倍くらいの「本気」で疲れるのだ。

 さぁ、と心の中で苦笑いした私は見えてきた校門付近に今日も集まってる女の子達を見た。

「毎日お気の毒様。こんなナルシストのどこがいいんだか」
「この俺の魅力に気付けないお前の方が100万倍お気の毒」

 余裕の笑みで返した真紘はスッと表情を変えて私に鞄を寄越した。

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