永遠の色を重ねて


──粉ひきのお父さんが亡くなり、三人兄弟の末っ子の少年は一匹の猫を貰いました。猫は少年に長靴と袋を用意させると、少年を侯爵に仕立てて王様を引き合わせたり、怪物を退治したりと大活躍。最後には少年と王女様は結婚し幸せになる物語です。


 時におかしく、時に静かに。土岐さんの語り口は人の心を捉えるのがお上手です。


 子どもの頃に一度は聞いたことのあるお話なのに、つい夢中になって聞き入ってしまいました。


「──おしまい。…なんて、退屈だったかしら?」


「いえ。とても面白いです。」


「ふふ、なら良かったわ。」


 土岐さんと居ると、田舎に住むおばあちゃんを思い出してとても温かい気持ちになります。


 それからしばらくの間、私達は病院自慢の花壇を眺めながら他愛のないお喋りをしていました。


「…あら?」


 ふいに土岐さんの視線が一点で止まりました。



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