永遠の色を重ねて


 そこには一匹の猫が居ました。首に鈴を付けた、可愛らしい三毛猫です。


 つい先程まで猫の物語を聞いていたものですから、少々驚いたのですけれど。


「みーちゃん!」


 その猫は花壇をすり抜け、土岐さんの足元にじゃれつきました。


「…知ってる猫ちゃんなんですか?」


「ええ。近所に住む野良なのよ、この子。まさか病院にまで来るなんてねぇ。」


 みーちゃんと呼ばれた猫は土岐さんの顔を見上げ、ミャアと一声鳴きました。心なしか、寂しげな声です。


「…やっぱり猫にも分かるのね。」


 土岐さんはみーちゃんに負けないくらい、悲しげな表情を浮かべました。


「どうか、したんですか?」


 数秒の沈黙を置いて、土岐さんは薄く微笑みながら答えて下さいました。


「今回退院したらね…わたし、老人ホームに入るのよ。」



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