永遠の色を重ねて


 数週間前、光崎さんは私にこうおっしゃいました。


『儂が絵を描き続けているのは、みんなが幸せそうに笑うからなんだ。退院祝いじゃなくてもいい。綾瀬さん、もしも笑顔になれない人が居たら、儂に話してはくれまいか。』


 私は土岐さんに幸せになってほしい。もちろんみーちゃんにも。たとえ現実は変わらなくても、少しでも心を軽くしてあげたい。そう思ったのです。


 光崎さんは私の話を聞き終えると閉じていた目を開け、言いました。


「…分かった。その人の為に、絵を描こう。」


 光崎さんは穏やかな笑みで頷いて下さいました。


「ありがとうございます…!」


 陽光を浴びて揺れる窓辺の花びら達。けして色褪せないそれらが重なり、描かれるもの。


それは、幸せのかたちでした。


「…綾瀬さん。もう一つお願いしてもいいかね?」


「はい。何でしょう?」



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