永遠の色を重ねて


 数日後。息子さん夫婦が迎えに来られて、土岐さんは退院することになりました。


 白い帽子を膝に置き、車椅子の上で頭を下げる土岐さん。そんな彼女に、私は例のものを手渡しました。


「土岐さん。退院おめでとうございます。」


「あらあら、ありがとう。何かしら?」


「どうぞ、開けてみて下さい。」


 土岐さんはそっと、四角い包みを広げました。


「まあ、素敵…!みーちゃんだわ!」


 そこに描かれていたのは、土岐さんの膝で眠るみーちゃんの姿。淡いピンク色の押し花が添えられていて、とても優しい絵です。


「これってもしかして…」


「ええ。花咲爺さんから、土岐さんへ。」


「綺麗ですねー。」


 一枚の絵を囲んで心から笑い合う親子三人。その光景もまた、素敵な絵のように輝いていました。


「ふふ、ありがとう。その花咲爺さんという人にもお礼を伝えて下さる?」


「ええ。もちろんです。」


 息子さんに車椅子を押され、土岐さんは退院していきました。最後まで笑顔で、手を振って。



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