永遠の色を重ねて
*
見えなくなるまで手を振る病院関係者に、土岐ハツ江は車内からもう一度頭を下げた。
──温かい人達に囲まれて、わたし、幸せだったわ。
寂しいけれど。腕に抱いた一枚の絵が、入院中のたくさんの思い出が、この先もずっと元気をくれる気がしていたから。
「母さん。母さんが入ることになったホームなんだけど…」
「…ええ。」
明日には隣県の老人ホームに入ることになっている。もう迷いはない。
けれども、息子の口から出たのは予想だにしなかった言葉だった。
「それがさ。病院の人の紹介で、ほら、近所に出来た新しい所。そこに入れてもらえることになったんだよ!」
「………え?」
驚きのあまり、年甲斐もなく素っ頓狂な声を上げてしまった。
──病院の、紹介…。
ふと手元の包みを見てみた。絵の下から、一通の封筒が覗いている。
恐る恐る、中身を広げて読んだ。
見えなくなるまで手を振る病院関係者に、土岐ハツ江は車内からもう一度頭を下げた。
──温かい人達に囲まれて、わたし、幸せだったわ。
寂しいけれど。腕に抱いた一枚の絵が、入院中のたくさんの思い出が、この先もずっと元気をくれる気がしていたから。
「母さん。母さんが入ることになったホームなんだけど…」
「…ええ。」
明日には隣県の老人ホームに入ることになっている。もう迷いはない。
けれども、息子の口から出たのは予想だにしなかった言葉だった。
「それがさ。病院の人の紹介で、ほら、近所に出来た新しい所。そこに入れてもらえることになったんだよ!」
「………え?」
驚きのあまり、年甲斐もなく素っ頓狂な声を上げてしまった。
──病院の、紹介…。
ふと手元の包みを見てみた。絵の下から、一通の封筒が覗いている。
恐る恐る、中身を広げて読んだ。