永遠の色を重ねて
頑張れお父さん
赴任してから約一ヶ月が経ちました。
木々の葉は青く染まり、風に揺れる若葉の季節です。
自然と穏やかな空気が漂う病院ですが、ある病室からはちょっとした口論が聞こえてきます。
「──だからぁ、毎日来なくても大丈夫だって!」
「じゃあ着替えとかどうすんのよ!何日同じパジャマ着る気なわけ!?」
私の担当患者さんである紅松 慎吾(クレマツ シンゴ)さんと、その奥さんの香耶乃(カヤノ)さんです。
先月から左足を骨折して入院なさっている紅松さん。奥さんは毎日休みなくお見舞いにやって来られるのですけれど、どうもその事が気になる様です。
「あ、綾瀬さん!ねー聞いてよっ、この人あたしのこと邪険にするのー!」
「あらあら。」
「そうじゃないって!」
年齢が近いからか、お二人共気さくに話しかけて下さってとても嬉しいのですけれど、どうも周りからの視線が痛いです。
「もう少し、声のボリュームを下げましょうか。」
「「あ、すみません…」」