永遠の色を重ねて
私は看護士になってまだまだ日が浅いですし、入院経験もないので、本当の意味で患者さんの気持ちを理解することは出来ないのかもしれません。
少々、一種の罪悪感を覚えました。
「…あら?」
ナースステーションに戻る途中、光崎さんの病室から誰かが出てこられました。
「あれは、病院長…?」
就職面接と入社式でしか拝見したことはありませんが、その方は確かに病院長でした。
ここは長期入院の方やリハビリ中心の病棟ですから、普段は病院長が来ることなど、しかも一患者さんだけを訪ねるなど、あまりないのですけれど。
不思議に思った私は、間を置いて光崎さんの病室に伺いました。
「失礼します。」
相も変わらず花に囲まれた個室。光崎さんは私に気がつくと、読んでいた本から視線を外し、微笑んで下さいました。
「おや、綾瀬さん。こんにちは。」
「こんにちは。」
いつもの光崎さんですが、心なしかいつもよりも優しい表情をしています。