永遠の色を重ねて


 病室を出る際、光崎さんはおっしゃっいました。


『将来子どもが生まれたら、うんと可愛がっておあげ。』


 光崎さんや紅松さん夫婦を見ていると、まだ見ぬ未来に希望が灯ります。


 私の両親も早くに離婚していたので、暖かい家庭への憧れがありました。


 優しい夫。子供は二人。裕福じゃなくていいから、笑いの絶えない明るい家族。そのイメージがさらに強まった気がします。


──やっぱり、みんなが笑顔でなくてはいけませんね。


 気を取り直し、私はナースステーションへと戻りました。


「電話、お借りしますね。」


「どうぞー。」


 名簿を開いて、ある所に電話を掛けます。


『──はい?』


「もしもし。紅松 香耶乃さんの携帯でよろしいでしょうか?」



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