永遠の色を重ねて
「真耶、どうして…」
香耶乃のパートの関係で、この時間には来れないはずだ。
「──綾瀬さんに電話貰ったの。『5分でもいいので娘さんと来て頂けませんか?』って。」
心の中を見透かしたように、カーテンの陰から香耶乃が顔を出して言った。
──ますます疑問だ。
「ん、どした?」
真耶がベッドにもぞもぞとよじ登ってきた。じーっと睨むような視線に、若干萎縮する。
「…パパっ、今はガマンなのよー!」
「…へ?」
訳が分からず聞き返すと、たどたどしい言葉で真耶は言う。
「寝てないと足治らないって!真耶、元気なパパがいいー!」
思わず目を見開いた。自分の苛立ちや不安は、もしかして伝わってたのか?逆に心配を掛けてたのか?
「…誰もあんたを責めてないし、嫌いになんてならないから。安心なさいっ。」
穏やかに笑う香耶乃の顔は嘘など吐いていない。一人焦っていた自分が、何だか馬鹿らしく思えた。
「…ま、無理して入院長引かせたら分かんないけど?」
「だ、大丈夫だって!」
しっかり向かい合って、言った。
「…治すから、待っててくれ。」