永遠の色を重ねて


 その日の夕方、事情を話すと光崎さんは快く了承して下さいました。


「人に教える程のものじゃあないが、喜んで。」


「そんなことはないです。ありがとうございます。」


 私はお礼を述べながらも、一つだけ気がかりなことがありました。


「ただ…」


「ただ?」


 ゆっくりと視線を移し、一面に広げられた花束に視線を留めました。


「喘息持ちの立樹くんが、この環境に耐えられるかが心配です。」


 大量の花粉は症状を引き起こす要因ともなります。いくらお互いが了承しても、危険が伴うのなら許可をしたくても出来ません。


 すると光崎さんは考えるような仕草をし、一つ提案をなさいました。


「なら、儂がその子の病室に行けば問題ない。」


 その言葉に、私は驚きました。


 光崎さんは一日一回リハビリの為に移動はなさいますが、それ以外で病室を出るところを見たことがないからです。



< 36 / 50 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop