永遠の色を重ねて
出来るだけいつものように笑顔で患者さん達に接しました。病気や怪我と闘う彼らに、無駄な不安感は与えたくありませんから。
上手く隠せている。そう思ったのですけれど。
「…何か、あったのかい?」
いつもの時間、花が溢れる病室で。光崎さんには一瞬で見抜かれてしまったようです。
私は何も答えられませんでした。隠し事は出来ても、嘘を吐くのは苦手です。
「…綾瀬さん。どうか顔を上げてくれ。」
言われて恐る恐る顔を上げました。そこにはいつもと変わらない、穏やかな笑顔と眼差しがあります。
「悩むことは悪いことじゃあない。それ程大事な悩みなら、むしろうんと時間を掛けるべきだ。」
窓越しの風の音だけが聞こえる、静寂。束の間の優しい沈黙が訪れました。
「けれども…貴女の笑顔が曇ってしまうような未来を、選んでほしくはないね。」